美容業界が抱える課題とは?美容室・サロンの今後の動向も解説
2022年8月31日
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について」では、美容師を含む「生活衛生サービスの職業」の有効求人倍率は3.01倍と報告されていますが、この数字は就職したい美容師1名に対しておよそ3倍の求人があることを示しています。
実際、美容師不足で悩む美容室オーナーは多く、美容室運営を安定させるための重要な課題だと言えるでしょう。
そこで今回は、美容ディーラーである弊社クリエイティブブレーンにご相談いただく内容をもとに、美容師が辞める理由と離職を防ぐ方法についてご紹介します。
美容師不足を解消し、美容室運営を安定させたいとお考えの美容室オーナー様は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
厚生労働省の統計によると、美容師を含む生活関連サービス業・娯楽業の平成30年3月卒就職者数は14,467名で、このうち1年未満で離職した数は4,211名。離職率に換算すると29.1%ですので、およそ10人中3人は離職しているということがわかります。
同年の全体での就職者数は149,358名、1年未満の離職者数は26,519名で、離職率は17.8%となっていますので、他の産業と比較してもやや高い数値だと言えるでしょう。
あくまで生活関連サービス業・娯楽業全体の数字ですので、美容師の離職率とは直結しないものの、美容ディーラーという仕事柄、数多くの美容室を見てきた弊社クリエイティブブレーンの肌感覚でも、29.1%という離職率の高さは妥当だと感じます。
ただ、多くの美容室オーナー様が「美容師が辞めてしまう」という問題に頭を抱えているのも事実であり、コンサルティングメニューも提供している弊社では、美容室の採用活動や人財育成プログラム等の取り組みも支援しています。
詳しくは「スタッフ採用・育成について」をご覧ください。
弊社クリエイティブブレーンでは、美容師の離職で悩まれるオーナー様からのご相談だけでなく、美容室を辞めようかと悩んでいる美容師からの相談もお受けすることがあります。
辞める理由のなかには、どうしても離職を止めることができないケースもありますが、反対に離職が回避できたであろうケースも多々存在します。そのため、美容室オーナーやスタッフを管理する立場にある人は、辞める理由から本質的な原因を見極めた上で判断することが大切です。
それでは実際の体験談をもとに、美容師の離職理由を5つに分けてご紹介します。
美容師を辞める理由の1つ目は、独立開業やスキルアップ目的の転職によるものです。
【独立開業やスキルアップ目的の背景】
技術職である美容師は独立志向の強い職種ですので、「いつか独立して、自分の美容室を持ちたい」という目標を持っている美容師が多いもの。また、最近では特定の美容室に属さないフリーランス美容師も増加傾向にあります。
加えて、ある分野に特化した美容室で自身のスキルを磨きたいという背景から、転職に踏み切ることもあるでしょう。
美容師を辞める理由の2つ目は、美容師自体を辞めたいというものです。
【美容師自体を辞める背景】
特にアシスタント期間である1〜5年目は、上記のような悩みから違う職種への転職を考える若手美容師が多く見られます。
美容師を辞める理由の3つ目は、病気や家庭事情による離職です。
【病気や家庭事情による離職の背景】
厚生労働省の「5 仕事をやめた者の退職理由ー第6回21世紀成年者縦断調査」では、特に女性において上記の事柄が離職の理由になっていることが報告されています。この統計は美容師だけを対象としたものではありませんが、美容業界においても、家族の介護や育児との両立が難しいことが理由で離職する女性美容師が少なくありません。
美容師を辞める理由の4つ目は、労働条件の問題によるものです。
これまで3つの理由をご紹介しましたが、「離職者が絶えない」「スタッフの本音がわからない」という場合は、根本的な原因として労働条件が起因している可能性を考えてみると解決の糸口が見えてくるかもしれません。
【労働条件の問題】
美容室を辞める本当の理由が上記のようなものだったとしても、オーナーや店長に本音を伝えることは大変難しく、大抵の場合は理由①〜③で述べたような事柄を理由に離職するケースが一般的です。
これは美容室に限ったことではなく、
厚生労働省の「5 仕事をやめた者の退職理由ー第6回21世紀成年者縦断調査」でも、「給与・報酬が少なかったから」「会社の経営方針に不満を感じたから」が最も多い回答となっています。
美容師を辞める理由の5つ目は、職場環境の問題によるものです。
理由④と同様に、理由①〜③は建前で、根本的な辞める理由となっている可能性があるでしょう。
【職場環境の問題】
美容師は技術職ですので、必然的に先輩から技術を教わって成長する”師弟関係”が色濃い世界です。そのため、「先輩の技術が下手」「人間性が尊敬できない」ことから自己成長が望めなくなり、他の美容室へ転職する美容師も少なくありません。
また、美容室という閉ざされた空間の中で日々業務をこなしますので、不当な扱いを受けていても相談できる相手がなく、次第に心身に不調が現れるようになって離職に追い込まれるケースもあります。
辞める理由を踏まえて、美容師の離職を防ぐ3つの方法をご紹介します。
①:労働環境を整備する
②:評価制度を構築する
③:コミュニケーションを取る
それでは詳しく見ていきましょう。
美容師の離職を防ぐ1つ目の方法は、労働環境の整備です。
労働環境の整備にあたっては、労働基準法に最低基準のルールが制定されていますので、法律上の基準に従って構築していきましょう。
労働基準法で守るべきルールは以下の通りです。
これらのルールに違反している場合は労働基準法違反となり、労働基準監督署からの指導が入ったり、罰金刑や懲役刑等の罰則が科されたりするケースがあります。また、労働条件を提示していない場合も同じく違反扱いとなります。
とは言え、美容室の現場では「休憩時間が確保できない」「施術が長引き残業は避けられない」といったケースが多いのも事実です。
具体策としては、休憩時間に対応がかぶらないように交代する、スタッフ同士が声を掛け合うという方法の他に、昼休憩が重なる時間帯の受付をクローズするといった工夫をしている美容室もあります。
また、雇用形態も正規雇用(正社員)にこだわらず、業務委託契約や非正規雇用(パート勤務)など多様な働き方を取り込むことで、人材不足の解消をはかることも可能です。
美容師の離職を防ぐ2つ目の方法は、評価制度の構築です。
すでに歩合手当やスキル・役職手当などを付与している美容室も多いかと思いますが、「評価制度や項目のクリア基準を美容師が理解していない」「何年経っても昇級しない美容師がいる」という状況にある美容室は、評価制度そのものを見直す必要があるかもしれません。
美容師が辞めない評価制度を構築するポイントには、次のようなものがあります。
特に、評価制度の見える化は美容師の離職を回避するために大変有効です。スタッフルームなどのスタッフ全員が目にする場に張り出し、評価項目と評価基準が一目でわかるようにしておくと良いでしょう。
また、店販を上手に取り入れることで店舗の売上アップにも繋がりますし、アシスタントにも昇級・昇給のチャンスが与えられますので、日々のモチベーションアップに貢献します。
美容師の離職を回避する方法の3つ目が、コミュニケーションを取ることです。
コミュニケーションといっても飲み会や交流会を開催するのではなく、日頃から意思疎通ができる風通しの良さを重視すべきだと言えるでしょう。
コミュニケーションを活性化させる方法には、以下のような具体策があげられます。
近年では、業務中でもサッと確認ができるスマホ対応のビジネスチャットツールを導入している美容室も増えている傾向にあり、店舗内での事務連絡や情報共有などの他、店舗間での業務連絡、店舗出勤が少ないオーナーへの連絡などにも活用されています。また、LINEやメールと違ってプライベートの連絡手段と切り離すことができるため、休日は仕事の情報を完全にシャットアウトすることも可能となります。
加えて、オーナーや店長といった上司の他に、直属の先輩として後輩をサポートするメンター制度の導入もおすすめです。姉・兄のような存在と表現されるメンター制度ですが、特に新人アシスタントの離職に効果を発揮します。
メンター制度はあくまで制度ですので、ルールに従って機能させることが大切です。例えば「後輩からの相談内容は上司であっても口外や進言はしない」「否定せずに受け止める」「パワハラ・セクハラはしない」といったルールを見える化しておけば、新人アシスタントも安心して相談することができるでしょう。
パワハラやセクハラの定義については、厚生労働省の下記資料を参考にご覧ください。
【参考】
美容師が辞める理由と、離職を防ぐ方法についてご紹介しました。
人材の定着は、安定した美容室運営に欠かせない課題です。
美容師が辞める理由を根本から解決していき、安定した美容室経営を目指していきましょう。
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